ベルトコンベヤを設計する際、適切なテークアップ装置を選定することは、ベルトの安定走行や設備の長寿命化に欠かせません。
テークアップの選定では、装置の種類だけでなく、必要なストローク、ベルトの伸び率、必要張力、コンベヤの機長、運転条件などを考慮する必要があります。
特に注意したいのが、ベルトの伸び率を何%と見込むか、そして、その伸びを吸収するためにどれだけのストロークが必要なのかという点です。
伸び率の設定が不適切だと、テークアップ装置のストロークが不足し、ベルトの張力を適切に維持できなくなる可能性があります。
一方、必要以上にストロークを大きくすると、装置が大型化し、設置スペースやコストが増加します。
この記事では、テークアップの基本的な役割から、装置の種類、ストロークの計算方法、ベルトの伸び率を設定する際の技術的な根拠まで詳しく解説します。
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ベルトコンベヤのテークアップとは?
テークアップとは、ベルトコンベヤのベルトに適切な張力を与え、その張力を維持するための装置です。
一般的には、テールプーリなどの位置を移動させることで、ベルトの張り具合を調整します。専用のテークアッププーリを設ける構造もあります。
ベルトコンベヤのベルトは、運転時の張力や温度変化などによって長さが変化します。
また、新品のベルトでは、使用開始後になじみや伸びが発生することがあります。
そのため、ベルトを取り付けたときに適切な張力を与えるだけでなく、運転開始後の伸びや長期使用による長さの変化にも対応できる構造が必要です。
テークアップの主な役割
テークアップには、主に次の役割があります。
- ベルトに必要な張力を与える
- 駆動プーリでのスリップを防止する
- ローラ間での過度なたるみを抑える
- ベルトの伸びや長さの変化を吸収する
- ベルトの接合や再接合に必要な長さを確保する
テークアップは単なるベルトの張り調整装置ではありません。コンベヤを安定して運転するために重要な設備要素です。
テークアップの種類と特徴
テークアップには、主にスクリュー式、重錘式、ウインチ式などがあります。
コンベヤの機長や負荷、ベルトの種類、運転条件、設置スペースなどを考慮して選定します。
スクリュー式テークアップ
スクリュー式は、調整ねじを回してプーリや軸受ユニットの位置を移動させる方式です。
手動で調整する構造が一般的で、小型コンベヤや比較的短いコンベヤなどに採用されます。
メリット
- 構造が比較的簡単
- 導入コストを抑えやすい
- 位置調整や点検が比較的容易
- 重錘を設置するスペースが不要
デメリット
- ベルトの伸びに自動では追従しない
- 定期的な張力調整が必要
- 調整範囲を超えると、ベルトの切り詰めや交換などが必要になる場合がある
スクリュー式を選定する際は、ベルトの伸びを吸収できる調整範囲が確保されているかを確認することが重要です。
また、左右に調整ねじがある場合は、プーリの軸が傾かないよう、左右の移動量を管理する必要があります。
重錘式テークアップ
重錘式は、重りの重量を利用してベルトに張力を与える方式です。
テークアッププーリを可動構造とし、重りによって一定の力を与えることで、運転中のベルトの伸びや張力変動に追従します。
長距離コンベヤや比較的負荷の大きいコンベヤなどで採用されます。
メリット
- ベルトの伸びに自動で追従できる
- 運転中の張力変動に対応しやすい
- 適切に設計すれば、張力を安定して維持しやすい
デメリット
- 重錘の設置スペースが必要
- 支持架台などの構造が大きくなりやすい
- 重錘や可動部に対する安全対策が必要
- ベルトの逆転運転など、運転条件によっては適用に制約がある
重錘式は、長距離・重負荷のコンベヤや、運転中の伸びに追従させたい場合に有効です。
ただし、重錘の重量とストロークは別々に検討する必要があります。重錘の重量は必要な張力に基づいて決め、ストロークはベルトの長さの変化などに基づいて決定します。
ウインチ式テークアップ
ウインチ式は、ウインチなどの駆動機構を用いてテークアッププーリの位置を調整する方式です。
長距離コンベヤなどで、必要な調整力やストロークを確保するために採用される場合があります。
メリット
- 大きな調整力を確保しやすい
- 長いストロークへの対応を検討しやすい
- 設計によっては、調整作業を遠隔化・自動化できる
デメリット
- 駆動機構や制御装置が必要になる場合がある
- 設備構成が複雑になりやすい
- 張力や位置の管理方法を検討する必要がある
ウインチ式は、重錘式での対応が難しい長距離コンベヤなどで選択肢となります。
なお、ウインチ式だからといって、必ずしも自動で張力を維持できるわけではありません。手動調整式なのか、自動張力制御式なのかを区別して選定する必要があります。
テークアップの選定で重要な項目
テークアップを選定する際は、次の項目を確認します。
| 選定項目 | 確認内容 |
|---|---|
| コンベヤの機長 | ヘッドプーリとテールプーリー間の中心距離、ベルトの全長 |
| ベルトの種類 | 布心体ゴムベルト、スチールコードベルト、樹脂ベルトなど |
| ベルトの伸び | 弾性伸び、永久伸び、初期伸び |
| 必要張力 | 負荷時の張力、起動時の張力、ベルトの最小たるみ等必要な張力条件 |
| テークアップ方式 | スクリュー式、重錘式、ウインチ式など |
| 必要ストローク | ベルトの長さの変化を吸収できる移動量 |
| 運転条件 | 起動・停止頻度、負荷変動、逆転運転の有無 |
| 使用環境 | 温度、湿度、搬送物の性質など |
| 設置条件 | 可動範囲、重錘の設置スペース、保守スペース |
特に重要なのが、ベルトの伸び率と必要ストロークです。
ベルトの伸び率は何%を見込めばよいのか?
テークアップの選定で悩みやすいのが、ベルトの伸び率です。
設計資料では、ベルトの伸びを考慮して、コンベヤの中心距離に対する一定割合をテークアップの調整量として設定する例があります。
しかし、すべてのベルトに対して一律の伸び率を適用できるわけではありません。
ベルトの伸びは、心体の材質や構造、運転時の張力、使用期間などによって異なります。
ベルトの伸びには種類がある
ベルトの長さの変化は、設計上、主に次のように整理できます。
① 弾性伸び
ベルトに張力が加わることで伸び、張力が小さくなると元に戻ろうとする伸びです。
起動時や負荷変動時など、ベルトに加わる張力が変化することで生じます。
② 永久伸び
使用中の負荷や時間の経過などによって生じる、完全には元に戻らない伸びです。
ベルトの心体材料や構造、運転条件によって、その程度は異なります。
③ 初期伸び・なじみによる伸び
新品のベルトを取り付けて運転を開始した後、心体のなじみなどによって生じる長さの変化です。
この変化はベルトの構造や材質によって異なります。
テークアップの必要量を検討する際は、これらの伸びを区別し、必要に応じて製造公差、接合に必要な余長、温度変化なども考慮します。
メーカー資料に記載された伸び率の例
ベルトの伸び率を設定する際は、一般論だけで決めるのではなく、使用するベルトのメーカー資料を確認することが重要です。
例えば、バンドー化学のコンベヤベルト製品資料には、特定のベルトについて、次のような伸びの目安が掲載されています。
| ベルトの種類 | 初期伸びの目安 | トータル伸びの目安 |
|---|---|---|
| モノプライベルト | 0.3% | 0.7% |
| 大塊ベルト | 0.9% | 1.7% |
同資料では、テークアップストロークについて、これらのトータル伸びに加えて0.4%の余長を加算するよう案内されています。
出典:バンドー化学「製品案内」掲載資料。数値は掲載された製品に対する目安であり、すべてのコンベヤベルトに適用できる一般値ではありません。
資料:[バンドー化学の製品案内に掲載された伸び率の表](https://expydoc.com/doc/7094006/%E8%A3%BD%E5%93%81%E6%A1%88%E5%86%85---%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BC%E5%8C%96%E5%AD%A6)
この例から分かるように、ベルトの種類によって、想定される伸び率は異なります。
また、伸び率だけでなく、ストロークに加算する余長もメーカーの指定に従って検討する必要があります。
なお、上記の資料は掲載元がメーカー公式サイトではないため、実際の設計では、バンドー化学の最新カタログや対象製品の技術資料で数値を再確認してください。
技術資料では、ベルトの構造によって推奨値が異なる
海外メーカーの技術資料でも、ベルトの構造によって必要なテークアップ量が異なることが示されています。
例えば、Phoenixの設計資料では、テークアップ長さの概算に用いる弾性伸びと永久伸びの合計について、次の値が参考値として記載されています。
| ベルトの種類 | 伸びの合計の参考値 |
|---|---|
| EPベルト | 約1.5% |
| スチールコードベルト | 約0.25% |
出典:Phoenix Conveyor Belts「Conveyor Belt Design Fundamentals」
資料:[Phoenix Conveyor Beltsの設計資料](https://studylib.es/doc/9297206/--phoenix-conveyor-belts-design-fundamentals)
これらの値は、ベルトの種類によって伸びの特性が大きく異なることを示す参考例です。
ただし、EPベルトやスチールコードベルトという分類だけで、すべての製品の伸び率が決まるわけではありません。実際の値は、心体の構造、設計張力、運転条件などによって変わります。
したがって、これらの数値をそのまま設計値として採用するのではなく、使用するベルトのメーカー資料と照合することが重要です。
規格や設計基準の数値は、その適用範囲を確認する
テークアップの調整量に関する資料として、ISO 3870:1976があります。
この規格は、布心体ベルトを使用する、プーリ中心間距離300m以下のばら物搬送用ベルトコンベヤを対象としたものです。
ただし、この規格は現在、廃止されています。
そのため、規格の存在を根拠に、記載された数値を現在のすべてのコンベヤに一律適用することは適切ではありません。
出典:ISO公式サイト「ISO 3870:1976」
資料:[ISO 3870:1976の規格情報](https://www.iso.org/standard/9463.html)
また、国土交通省北海道開発局の公開資料には、特定の設備設計基準として、テークアップ装置のストロークをベルトコンベヤ機長の2%以上とする記載があります。
ただし、これは当該設計基準の適用条件における規定です。すべてのベルトコンベヤに対して2%以上が必要だと示す、一般的なベルト伸び率の規定ではありません。
資料:[国土交通省北海道開発局の公開設計資料](https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/jg/gijyutu/splaat000001w1j0-att/splaat000001w47y.pdf)
伸び率の根拠を明確にするには、使用するベルトのメーカー資料を優先し、必要に応じて設備の設計基準や適用可能な規格を確認する必要があります。
テークアップストロークの計算方法
テークアップのストロークを計算する際は、最初に設計基準やメーカー資料で必要なストローク率を決定します。
その後、基準となるコンベヤの中心距離にストローク率を乗じて、必要な移動量を求めます。
基本的な計算式
コンベヤの中心距離を基準としてストローク率が指定されている場合、計算式は次のとおりです。
必要ストローク = コンベヤの中心距離 × ストローク率
ここで使用するストローク率は、ベルトの伸び率そのものではなく、テークアップ装置の移動量として定義された割合です。
例えば、設計基準でストローク率を2%とする場合、次のように計算できます。
- コンベヤの中心距離:20m
- ストローク率:2%
必要ストロークは、
20m × 0.02 = 0.4m
となります。
したがって、必要なテークアップストロークは400mmです。
ただし、これはストローク率を2%と設定した場合の計算例であり、2%という数値がすべてのコンベヤに適用されることを意味するものではありません。
ベルトの伸び率から必要ストロークを検討する場合
ベルトの伸び率から必要な調整量を検討する場合は、ベルトの全長の変化とテークアップの移動量の関係を確認する必要があります。
例えば、ベルト全長の伸び率が0.7%であっても、テークアッププーリが移動する距離が、単純にコンベヤ中心距離の0.7%になるとは限りません。
テークアッププーリを移動させると、通常はベルト経路の複数の区間の長さが変わります。そのため、プーリの配置やベルトの掛け方によって、必要な移動量が変わります。
実際の選定では、次の手順で検討します。
- 使用するベルトの伸び率をメーカー資料から確認する。
- ベルトの全長、コンベヤ中心距離、プーリの配置を確認する。
- ベルトの長さの変化をテークアッププーリの移動量に換算する。
- ベルトの製造公差、接合に必要な余長、運転条件などを考慮する。
- 必要な調整範囲と、実際に使用可能なストロークを確認する。
このように、ベルトの伸び率からストロークを決める場合は、単純な割合の計算だけでなく、テークアップ装置の構造を考慮することが重要です。
バンドー化学の資料を使った計算例
前述したバンドー化学の資料に記載された数値を使い、計算方法を確認します。
ここでは、説明のためにコンベヤ中心距離を30mと仮定します。
モノプライベルトの場合
資料に記載されたトータル伸びの目安は0.7%、ストロークに加算する余長は0.4%です。
これらを単純に合計すると、
0.7% + 0.4% = 1.1%
となります。
仮に、これらの割合をコンベヤ中心距離に対する必要ストローク率として適用できる設計条件であれば、
30m × 0.011 = 0.33m
となり、計算上のストロークは330mmです。
大塊ベルトの場合
資料に記載されたトータル伸びの目安は1.7%、ストロークに加算する余長は0.4%です。
これらを単純に合計すると、
1.7% + 0.4% = 2.1%
となります。
同様の仮定のもとでは、
30m × 0.021 = 0.63m
となり、計算上のストロークは630mmです。
計算例の注意点
上記は、資料に記載された割合を同じ基準長さに対して単純に合計した説明用の計算例です。
メーカー資料の「トータル伸び」と「テークアップストロークに加算する余長」が、それぞれどの長さを基準に定義されているかを確認せずに、実設計へそのまま適用してはいけません。
実際の設計では、メーカーが指定するストロークの定義、テークアップの構造、ベルト全長とコンベヤ中心距離の関係を確認したうえで、必要な移動量を決定します。
また、初期位置の設定や、伸びを吸収するために残しておくべきストロークについても検討する必要があります。
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テークアップ選定で注意したいポイント
テークアップを選定する際は、ストロークの数値だけで判断するのではなく、次の点も確認しましょう。
必要な張力とストロークを分けて検討する
テークアップのストロークが十分に確保されていても、必要な張力が得られなければ、ベルトのスリップや過度なたるみが発生する可能性があります。
反対に、張力が適切であっても、ストロークが不足していれば、ベルトが伸びたときに適切な張力を維持できなくなります。
そのため、必要張力と必要ストロークは、それぞれ別の設計項目として検討することが重要です。
ストロークの全量を伸びの吸収に使えるとは限らない
テークアップ装置には、設置時の初期位置や、運転中に確保しておくべき余裕があります。
そのため、装置の全ストロークをベルトの伸びの吸収に使用できるとは限りません。
メーカー資料などを参考に、初期位置を設定し、必要な調整範囲が残るように検討する必要があります。
起動時や負荷変動も考慮する
ベルトは定常運転時だけでなく、起動時、停止時、負荷変動時にも張力が変化します。
特に長距離コンベヤや重負荷コンベヤでは、起動時の張力変動なども考慮して、テークアップの方式や必要な調整範囲を検討することが重要です。
温度や搬送物の条件を確認する
使用温度や搬送物の温度、湿度などの条件によっても、ベルトの長さや特性が変化する場合があります。
また、ローラの回転抵抗が増加すると、運転時の張力にも影響する可能性があります。
このような条件を考慮し、必要に応じてメーカーに確認したうえで設計値を決定します。
ベルトの再接合や交換も考慮する
長期間使用するコンベヤでは、ベルトの再接合や交換が必要になる場合があります。
その際、作業に必要な余長やテークアップの位置が確保されていないと、保全作業が難しくなる可能性があります。
そのため、通常運転時の伸びだけでなく、保全作業も考慮してテークアップの配置や調整範囲を検討することが大切です。
まとめ:テークアップはベルトの種類と伸び率の根拠を確認して選定する
ベルトコンベヤのテークアップを選定する際は、装置の種類、必要張力、ストローク、運転条件、設置スペースなどを総合的に検討する必要があります。
特に、ベルトの伸び率については、すべてのコンベヤに一律の数値を適用するのではなく、使用するベルトのメーカー資料を根拠に設定することが重要です。
今回のポイントを整理すると、次のとおりです。
- テークアップの種類: スクリュー式、重錘式、ウインチ式などから、コンベヤの条件に適した方式を選定する。
- ベルトの伸び率: 心体の材質や構造、張力、運転条件などを考慮し、メーカー資料を確認する。
- 必要ストローク: ベルトの伸び率とストローク率を区別し、テークアップの構造に応じて計算する。
- 設計基準: 数値の根拠と適用範囲を確認し、特定の設備に対する基準をすべてのコンベヤに一般化しない。
- 保全性: 初期位置や調整余裕、ベルトの再接合・交換に必要なスペースも考慮する。
テークアップの選定では、単に「機長の何%」という数値だけで決めるのではなく、ベルトの特性と設備の運転条件を踏まえて、必要な張力とストロークを適切に設定することが大切です。
設計段階で伸び率の根拠を明確にし、十分な調整範囲を確保することで、ベルトコンベヤの安定運転と保全性の向上につながります。
設計で必要な知識などの記事はこちらにもたくさんあるのでよろしければ見ていってください!
