身の回りにたくさんある「ゴムの正体」 について解説します。
ゴムは不思議な材料です。
「大きく伸びる」「元に戻る」「柔らかいのに荷重を支える」
しかし実は、
ゴムの「伸びる仕組み」は、金属とはまったく違います。
この記事では、
- ゴムが伸びる理由
- 金属ばねとの違い
- なぜ劣化するのか
- なぜタイヤに使われるのか
まで、設計者目線で解説します。
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目次
ゴムは「分子のばね」
まず結論から言うと、
ゴムは「長い分子鎖」が絡み合った材料
です。
✔ ゴムの中身
ゴムの内部には、非常に長い分子と糸のような高分子鎖が大量に存在しています。
これらは絡み合いながら、ぐちゃぐちゃに丸まった状態
つまり、ランダムコイルを作っています。
ゴムが伸びる本当の理由
ゴムは、分子そのものが伸びるわけではありません。
✔ 実際に起きていること
力を加えると、丸まった分子は引き伸ばされるだけです。
つまり、
「絡まった糸がほどけるように変形している」
こうしてゴムは伸びるのです。
金属ばねとの違い
金属ばねとはまったく違う仕組みです。
✔ コイルばね
コイルのような金属ばねは、形状で伸びるので
材料自体はほとんど伸びていません。
実際には、コイル形状に変形せん断変形が蓄積して伸びています。
✔ ゴム
一方ゴムは、材料そのものが変形しています。
しかも、どの方向から力を加えても変形可能です。
✔ なぜ全方向に伸びるのか
ランダムコイルは球状なので、どの方向にも変形できるからです。
イメージとしては、
「超小型のばねが全方向に無数に入っている」感じです。
なぜゴムは元に戻るのか
分子構造に秘密があります。
ゴムの分子鎖は、自由に動けそうで、完全には動けないという特徴があります。
✔ 分子鎖は絡み合っている
そのため、引っ張ると伸び、力を抜くと元に戻ろうとします。
これがゴムの弾性の正体なのです。
ゴム製品に必須の「架橋」
しかし、分子が絡んでいるだけでは問題があります。
そのままだとバラける
引っ張り続けると、分子鎖がほどける ⇒ 元に戻らない
状態になってしまいます。そこで「架橋」をするのです。
架橋(かきょう)とは、分子同士を化学的に結合する処理です。
つまり、ゴムの分子どうしを“橋”でつないで、網目状の構造にすることです。
この処理によって、柔らかいゴムが「弾力があり、戻りやすく、熱に強い材料」になります。
加硫とは何か
この架橋を作る代表的方法が
加硫(かりゅう)
です。
加硫(かりゅう)とは、ゴムに硫黄などを加えて加熱し、分子同士を結びつける処理です。
つまり、「ゴムを架橋して実用的な性能にする工程」のことです。
グッドイヤーの発見
硫黄を使って分子鎖同士を結合すると、「弾性」「強度」「耐久性」が大きく向上しました。
これが現代ゴムの基本です。
加硫すると、具体的には
- ベタつきにくくなる
- 弾力が増す
- 熱や摩耗に強くなる
- 元の形に戻りやすくなる
ため、タイヤなどに使える丈夫なゴムになります。
代表的なのは、天然ゴムや合成ゴムに硫黄を加えて加熱する「硫黄加硫」です。
なぜタイヤは黒いのか
これも有名ですが、実は重要です。
✔ カーボンブラック
ゴムには「カーボンブラック」という微粒子が入っています。
カーボンブラックの役割は
「強度向上」「摩耗低減」「耐久性向上」です。
つまり、ゴムを「強く・長持ち」にする補強材です。
特にタイヤではほぼ必須で、入れないと柔らかすぎてすぐ摩耗します。
最近はシリカも重要
最近の低燃費タイヤでは、「シリカ」が使われています。
なぜシリカなのでしょうか?
シリカはゴムを補強する白色系の充填材です。
役割はカーボンブラックに似ていますが、特に「低燃費化」と「ウェット性能向上」に強みがあります。
タイヤに使うと、転がり抵抗を下げられるため、「燃費改善」、「発熱低減」につながります。
ただし、そのままだとゴムとなじみにくいため、通常はシランカップリング剤とセットで使われるようです。
ゴムの弱点
ここが設計的に重要です。
✔ ゴムは化学的に不安定
ゴムの分子鎖には、「二重結合」が存在します。
これが、
「酸素」「紫外線」「オゾン」「熱」と反応して劣化します。
劣化すると何が起きる?
✔ 分子鎖切断
ゴムの分子鎖が切れると、弾力が失われて劣化します。
柔らかくなり、ボロボロになってしまいます。
これは、分子が長くつながっていることで成り立っていた「ゴムらしい性質」が失われるためです。
✔ 再結合
切れた分子鎖どうしが再結合すると、再びネットワーク(架橋構造)ができます。
ただし、元通りになるとは限らず、さらに硬くなったり、脆くなったり、伸びにくくなったりします。
劣化中の再結合では「不均一で過剰な架橋」が起こりやすいためです。
ゴムの経年硬化の一因でもあります。
つまり
ゴムは「柔らかくなる場合」と「硬くなる場合」がある
ということです。
疲労破壊も起きる
ゴムも金属と同じく疲労します。
✔ 繰り返し変形
大きな変形を繰り返すと、分子鎖切断や内部に小さな傷がたまり、最終的に亀裂や破断が起きます。
最終的には、小さな傷 ⇒ クラック ⇒ 破断につながっていきます。
熱・酸化・過大変形があると疲労破壊は進みやすくなります。
なぜ寒いとゴムが硬くなる?
これも分子運動が原因です。
✔ 低温では分子が動けない
ゴムの弾性は、「分子鎖が自由に動けること」で成立しています。
ここで重要なのは次の項目です。
✔ ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度(Tg)とは、ゴムが柔らかく動ける状態からガラスのような硬い状態に切り替わる温度のことです。
- Tgより高温 ⇒ 柔らかい・ゴムらしい
- Tgより低温 ⇒ 硬い・割れやすい
となります。
ゴムでは特に低温性能に重要で、Tgが低いほど寒い場所でも柔らかさを保ちやすいです。
例えば冬タイヤでは、低いTgの材料が使われます。ある温度以下では、分子運動が停止し、ゴムらしさ消失します。
天然ゴムの面白い性質
天然ゴムには特殊能力があります。
✔ 伸長結晶化
天然ゴムの伸長結晶化とは、引っ張られたときに分子鎖が整列し、一部が結晶化して強くなる現象です。
すると、強度が向上し耐衝撃性も向上します。
天然ゴムは飛行機タイヤにも使われるそうです。
ゴム設計の本質
ここまでをまとめると、
ゴムは単なる「柔らかい材料」ではありません。
✔ ゴムとは
分子運動+架橋+充填材+温度依存
で成立する、非常に高度な材料設計です。
まとめ
ゴムが伸びる理由
- 分子鎖が絡み合っている
- ランダムコイルが変形する
- 架橋で元に戻る
ゴムの弱点
- 熱
- 紫外線
- 酸化
- 疲労
ゴムは「柔らかい材料」ではない。
“分子を設計して作るばね”である。
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