知的財産 知財検定1級

【知財1級対策】特許の早期審査とスーパー早期審査の違い|条件・メリット・使い分けを解説

特許出願をしても、通常の審査では特許査定まで時間がかかることがあります。

しかし、

  • 早く製品を販売したい
  • 競合他社が同じ技術を使っている
  • 外国でも特許を取得したい
  • 投資家や取引先に早く権利化したことを示したい

といった場合には、通常より早く審査してもらえる制度があります。

それが、

早期審査

スーパー早期審査

です。

名前は似ていますが、対象となる出願や手続上の条件、審査のスピードが異なります。

知財検定1級問題集はこちら↓↓

https://link.amazon/B0dMLmS5u


1.そもそも早期審査とは?

特許庁には、一定の要件を満たす特許出願について、通常より早く審査を行う早期審査制度があります。

通常の審査とは別に、出願人が「早期審査に関する事情説明書」を提出して申請します。

重要なのは、

「早く審査してほしい」と思っただけで、誰でも利用できるわけではない

ということです。

一定の対象となる出願である必要があります。


2.早期審査の主な対象

早期審査には複数の対象があります。

例えば、

① 実施関連出願

出願人自身またはライセンシーなどが、その発明を実施している、または一定期間内に実施する予定がある出願です。

例えば、

新しいコンベヤを開発

製品として販売・使用する予定

特許出願

早く権利化したい

というケースです。


② 外国関連出願

日本だけでなく、外国にも同じ発明について出願している場合です。

例えば、

日本出願

米国出願

欧州出願

というようなケースです。

ただし、ここは非常に重要です。

通常の早期審査では、外国出願は必須ではありません。

「外国関連出願」は、早期審査を利用できる事情の一つです。


③ 中小企業・個人・大学・公的研究機関等の出願

一定の中小企業、個人、大学、公的研究機関などによる出願も、早期審査の対象となり得ます。

このため、

「外国出願はないけれど、中小企業だから早期審査を利用する」

ということも可能です。


3.スーパー早期審査とは?

スーパー早期審査は、

早期審査よりもさらに早く審査を行う制度

です。

ただし、その分、通常の早期審査よりも条件が厳しくなっています。

特許庁の制度では、スーパー早期審査の対象となるのは、原則として、

①出願審査請求済みで、審査着手前

かつ、

②実施関連出願+外国関連出願

であるものです。

さらに、

③申請前4週間以降に行ったすべての手続をオンラインで行う

という条件もあります。


4.スーパー早期審査にはスタートアップ向けの特例がある

ここは最近の制度を理解するうえで重要です。

スーパー早期審査は原則として、

実施関連出願+外国関連出願

ですが、

スタートアップの場合

実施関連出願

であれば、外国関連出願がなくてもスーパー早期審査を利用できます。

つまり、

通常のスーパー早期審査スタートアップ
実施関連出願必須必須
外国関連出願原則必須不要
オンライン手続必須必須

という整理です。


5.「審査着手前」が重要

スーパー早期審査では、

審査着手前

であることが必要です。

ここでいう「審査着手前」とは、例えば、

  • 拒絶理由通知
  • 特許査定の謄本
  • 先行技術文献開示義務違反の通知
  • 同日出願に関する協議指令

などが到達する前です。

したがって、

「もう拒絶理由通知が来たけど、スーパー早期審査にしてほしい」

ということはできません。


6.どのくらい早い?

スーパー早期審査の大きなメリットがスピードです。

特許庁によると、2024年のスーパー早期審査では、平均審査順番待ち期間が0.8か月でした。

国内出願については、原則として、

スーパー早期審査の申請から1か月以内

に一次審査を行う運用となっています。

つまり、

通常審査
   ↓
通常のスケジュールで審査

早期審査
   ↓
通常より早く審査

スーパー早期審査
   ↓
さらに短期間で審査

というイメージです。


7.早期審査とスーパー早期審査の比較

項目早期審査スーパー早期審査
審査請求必要必要
外国出願必須ではない原則必要
実施関連出願対象の一つ原則必須
スタートアップ対象になり得る実施関連なら外国出願不要
審査着手前スーパー早期ほど厳格ではない必須
オンライン手続スーパー早期特有の制約なし原則必須
スピード通常より早いさらに早い
事情説明書必要必要

8.どちらを使えばいい?

例えば、普通の企業が新しい機械を開発して特許出願したとします。

手数料は別で必要になることは現在はありませんが、弁理士費用が追加でかかる場合があります。

ケース①

日本で製品を販売する予定
外国出願はしない

この場合でも、

実施関連出願として早期審査を検討できます。

ただし、通常のスーパー早期審査では外国関連出願の要件を満たさないため、原則としてスーパー早期審査は利用できません。


ケース②

日本で製品化予定
米国にも出願予定
できるだけ早く日本の権利を取得したい

この場合は、

スーパー早期審査

を検討できます。


ケース③

スタートアップ企業
新技術をすでに事業化している
外国出願はまだしていない

この場合でも、スタートアップ向けの要件を満たせば、

スーパー早期審査

を利用できる可能性があります。


9.PPHとの違い

早期審査と一緒に覚えておきたいのが**PPH(特許審査ハイウェイ)**です。

簡単に区別すると、

早期審査

日本で早く審査してもらう制度

スーパー早期審査

日本でさらに早く審査してもらう制度

PPH

他国の特許庁などでの審査結果を利用して、別の特許庁で早期審査を受ける仕組み

です。


10.まとめ

早期審査とスーパー早期審査は、名前が似ていますが、条件が違います。

特に覚えておきたいのは、

早期審査=外国出願は必須ではない

という点です。

一方、

スーパー早期審査=原則「実施関連+外国関連」

です。

ただし、

スタートアップなら「実施関連」で外国関連出願がなくても利用可能

という特例があります。

さらにスーパー早期審査では、

審査着手前

かつ、

申請前4週間以降のすべての手続をオンラインで行う

という条件もあります。

覚え方

早期審査

「事情があるから早く!」

スーパー早期審査

「実施している+外国にも出願している。だからもっと早く!」

スタートアップ

「実施しているなら、外国出願がなくてもスーパー早期審査の対象になり得る!」

と覚えると分かりやすいです。

他にもこちらに知的財産の記事をまとめていますので、良かったらどうぞ。

  • この記事を書いた人

Lancer

現役の機械設計エンジニアです。 ロボット工学部卒業後、土木施工管理を経験し、現在は機械設計の仕事に従事しています。知的財産管理技能検定2級を取得。 現場と設計の両方を経験した視点から、建設業や機械設計、資格、働き方改善に役立つ情報を発信しています。 「実体験に基づいた分かりやすい情報」を心がけています。

-知的財産, 知財検定1級
-