目次
はじめに
知的財産管理技能検定1級の勉強をしていて、パリ条約4条Fでつまずくことがありました。
条文には、
「二以上の優先権を主張することを理由として…」
など難しい表現が並んでおり、何を言いたいのか分かりにくいですよね。
しかし、この条文が伝えたい内容は実はシンプルでした。
「複数の優先権を認めること」と「一部優先を認めること」
この2つを理解すれば、試験でも十分対応できます。
この記事では、具体例を使ってわかりやすく解説します。
パリ条約4条Fとは?
条文のポイントは次の2つです。
① 複数の優先権を主張できる。
② 後の出願に新しい事項が追加されていても、そのことだけで優先権全体を否定してはならない。
つまり、「全部認める」か「全部認めない」かではなく、発明ごとに優先権を判断するという考え方です。
複数優先権(Multiple Priorities)とは?
例えば、次のようなケースを考えてみます。
1回目の出願
2026年1月1日
発明Aを日本で出願
2回目の出願
2026年3月1日
発明Bを日本で出願
外国出願(パリ優先権主張)
2026年12月1日
発明Aと発明Bをまとめて米国へ出願
この場合、
- 発明Aについては1月1日の優先権
- 発明Bについては3月1日の優先権
を同時に主張できます。
これを複数優先権といいます。
つまり、
「優先権は一つしか主張できない」というルールではありません。
一部優先とは?
次はさらに重要なポイントです。
例えば、
最初の出願
2026年1月
発明Aのみ出願
外国出願(パリ優先権主張)
2026年12月
発明A+発明B
をまとめて出願しました。
ここで
発明Bは最初の出願には記載されていません。
すると、
「発明Bが追加されているから優先権は全部認めません。」
と言われたら困ります。
そこでパリ条約4条Fは、
そのような扱いをしてはいけない
と定めています。
優先日は発明ごとに判断される
この場合、
| 発明 | 優先日 |
|---|---|
| 発明A | 2026年1月(優先権あり) |
| 発明B | 2026年12月(優先権なし) |
となります。
つまり、
優先権は発明ごとに認められるということです。
これを「一部優先」の考え方と理解すると分かりやすいでしょう。
機械設計で例えると
例えば、ベルトコンベヤを設計しているとします。
2026年1月
「テンション調整機構」を発明して出願しました。
2026年5月
さらに
「AIによるベルト張力制御」
を開発しました。
2026年12月
外国へパリ優先権主張して
- テンション調整機構
- AI張力制御
をまとめて出願します。
(まとめて出願とは、一つの出願(1件の特許出願)の中に、複数の請求項として複数の発明を含めるという意味)
この場合、テンション調整機構は
1月の優先日
AI制御については
12月の出願日
となります。
つまり、
テンション調整機構にも、AI制御にもそれぞれの優先権があります。
「発明の単一性」が必要
パリ条約4条Fには
「ただし、発明の単一性がある場合に限る」
という規定があります。
例えば、
- ベルトコンベヤ
- スマートフォン
を一つの出願にまとめることは通常できません。
そのため、
複数優先権や一部優先が認められる前提として、
発明の単一性を満たしている必要があります。
試験で狙われるポイント
知的財産管理技能検定1級では、次のような選択肢がよく出題されます。
「後の出願に基礎出願に記載されていない事項が含まれている場合、優先権主張全体が無効となる。」
これは誤りです。
正しくは、
- 基礎出願に記載されていた部分は優先権の利益を受ける。
- 新たに追加した部分だけが後の出願日を基準とする。
という考え方になります。
知財検定1級問題集はこちら↓↓
まとめ
パリ条約4条Fは、難しい条文に見えますが、覚えるべきポイントは次の3つだけです。
- 複数の優先権を同時に主張できる。
- 新しい事項が追加されても、優先権全体が失われるわけではない。
- 優先権は発明ごと(構成ごと)に判断される。
この考え方は「一部優先」と呼ばれ、知的財産管理技能検定1級では頻出論点です。
条文を暗記するだけでなく、「どの部分に優先権が認められるのか」を具体例で考えられるようになると、事例問題にも対応できるようになります。
他にもこちらに知的財産の記事をまとめていますので、良かったらどうぞ。