見た目が無事でも使ってはいけない理由を解説します。
現場でよく聞く質問があります。
「外した高力ボルト、まだキレイだから使えるよね?」
結論から言うと高力ボルトは原則“再使用禁止”です。
これはメーカー都合ではなく、力学的に再現性が失われるためです。
目次
高力ボルトは一度で役目を終える部品
高力ボルトは普通ボルトと違い、強く締めて固定する部品ではありません
目的は:
決められた軸力を確実に導入すること
です。
つまり高力ボルトは「軸力発生装置」とも言えます。
ボルトは締付時に伸びている
本締め時、高力ボルトは下記の通りの挙動をします。
- 強力に引っ張られる
- わずかに伸びる
- 弾性限界近くまで力がかかる
これは意図的にです。
この伸びによって、「安定した軸力」「摩擦接合力」が得られます。
しかし、一度伸びたボルトは下記のような
- 微小な塑性変形
- ねじ山の変形
- 表面損傷
が起こっています。
これは、外見では分かりません。
再締結しても軸力が読めない
再使用すると、同じトルクでも、同じ締付方法でも入る軸力がバラバラになります。
原因は
- ねじ部の摩擦係数変化
- 座面の傷
- 湿気などの影響による潤滑状態の変化
- 伸び履歴があること
つまり、
設計通り締めた“つもり”でも設計軸力にならない。
これは摩擦接合では致命的になるのです。
ワッシャー・ナットも同様
実は再使用禁止なのは、ボルトだけでなく、「ナット」も「ワッシャー」もです。
つまり、セット全体が再使用できません。
理由は
- 座面が食い込んでいるから
- 面圧履歴が残るから
- 摩擦条件が変化するから
です。
摩擦接合は「面の状態」が命だからです。
トルシアボルトは物理的に不可能
トルシアボルト(TCボルト)は、
ピンテール破断= 設計軸力到達
としています。
一度締めると軸力管理機構そのものがなくなるので、再使用は構造的に不可能です。
一番危険なケースは?
最も危険なのは
仮組で使ったボルトを本施工に流用
これは現場でもやってしまう可能性があります。
仮締めだとしても、伸びてしまったり、摩擦状態が変化してしまったりしています。
「もったいない」が事故を生む
高力ボルトは高価です。
だから再利用したくなりますよね。
しかし、高力ボルト接合は
ボルト1本=接合性能
です。
ボルト1本の性能不信が、接合部全体の信頼性を崩します。
ちなみに、高力ボルト協会のページでは、3年程度の保管は問題ないとされています。
まとめ
高力ボルトは消耗品です。
再使用禁止とは
「壊れるから」ではなく「性能を保証できなくなるから」
です。
見た目では判断できない。
だから規格で禁止されているのです。
機械設計に役立つ情報をこちらでまとめていますのでよかったらご参照ください!
