設計段階で対応する基本ポイントだけをまとめました。
SS400に代表される一般構造用圧延鋼材は、機械部品や架台、フレームなど幅広く使われています。
屋外使用や防錆目的で亜鉛メッキを施すケースが多いです。
でも「とりあえずメッキすれば大丈夫」と考えると、思わぬトラブルにつながることがあります。
本記事では、亜鉛メッキの基本的な特徴と、設計・製作時に注意すべきポイントをまとめていきます。
参考文献↓↓
目次
亜鉛メッキの簡単な特徴
亜鉛メッキは、鉄の表面を亜鉛で覆うことで防錆性能を高める処理です。
主に以下の特徴があります。
- 犠牲防食作用
亜鉛は鉄より先に腐食するため、被膜が傷ついても鉄を守る効果がある。 - 耐食性が高い
屋外や湿気の多い環境でも比較的長期間使用できる。 - 膜厚が比較的厚い(溶融亜鉛メッキの場合)
塗装よりも耐久性が高い反面、寸法への影響が出やすい。
一方で、設計段階で配慮しないと不具合が出やすい処理でもあります。
亜鉛メッキ時の主な注意点
1. 溶接はできるだけ減らす・仕上げを丁寧に
溶接部は、
- 表面が粗くなりやすい
- スラグやブローホールが残りやすい
といった理由から、メッキ不良(未着、ピンホール)の原因になります。
対策として
- 不要な溶接は避ける
- 溶接後は研磨して表面を滑らかにする
- すみ肉溶接部の段差をできるだけ小さくする
以上のことが挙げられます。
2. 鋭角・シャープな形状を避ける
亜鉛メッキでは、角部に亜鉛が回り込みにくく、
逆に角が鋭いと膜厚が極端に薄くなることがあります。
対策
- エッジはRを付ける(面取り)
- 極端な鋭角形状を設計段階で避ける
これは防錆性能だけでなく、ケガ防止や外観品質の面でも重要です。
3. 袋構造・密閉構造に注意
溶融亜鉛メッキでは、酸洗いや加熱工程があります。
内部に液体や空気が閉じ込められると、
- メッキ不良
- 内圧による変形
- 破裂事故
につながることもあります。
対策として
- 中空材や箱形構造には逃げ穴(通気孔・排液孔)を設ける
- 逃げ穴位置・穴径はメッキ業者と事前に相談する
上記の様にするべきです。
4. 寸法精度が必要な部位には不向き
溶融亜鉛メッキは膜厚が数十μm以上になるため、
- ボルト穴
- はめあい部
- 摺動部
では、寸法の精度が出ず、組立ができないことも考えられます。
対策として
- メッキ後加工を前提にする
- その部分のみマスキング・別処理にする
- 電気亜鉛メッキや塗装への変更を検討する
などが考えられます。
5. 材質・板厚による変形
溶融亜鉛メッキは高温(約450℃)で処理されるため、
- 薄板
- 左右非対称構造
- 応力の残った部品
では、反りやねじれが発生することがあります。
対策として
- 板厚に余裕を持つ(最低でも6mm以上)
- 対称構造を意識する
- 必要に応じて治具使用や事前相談を行う
H鋼フレームなど大型構造物を亜鉛メッキする際の注意点
SS400の板物や小物と比べ、H鋼フレームや大型の架台を亜鉛メッキする場合は、さらに注意すべき点があります。
サイズが大きくなるほど、変形・めっきムラ・施工可否といった問題が顕在化しやすくなります。
1. メッキ槽に入るサイズか事前確認が必須
大型のH鋼フレームでは、そもそもメッキ槽に物理的に入らないケースがあります。
- 長さ・幅・高さが槽サイズを超えないか
- 斜め投入が可能か
- 分割メッキが必要か
設計完了後では対応できないことも多いため、早い段階でメッキ業者にサイズ確認を行うことが重要です。
2. 熱による反り・ねじれが発生しやすい
溶融亜鉛メッキは約450℃の高温処理です。
H鋼フレームのような大型構造物では、
- 長尺材の反り
- 左右非対称構造によるねじれ
- 溶接残留応力の解放による変形
が起こりやすくなります。
対策として
- 可能な限り左右対称・上下対称の構造にする
- 溶接順序や溶接量を抑える
- 長尺材は補強を入れる、または分割構造を検討する
特に大型の部材は長尺になりやすいと思うので、気をつけたいところですね。
3. H鋼の重なり部・内側はメッキ不良が出やすい
H鋼フレームでは、以下の部位に注意が必要です。
- H形鋼のフランジとウェブの内側
- 補強材・リブの重なり部
- 隙間が狭い合わせ構造
これらの部分は、
- 酸洗液や亜鉛が流れにくい
- エア溜まりができやすい
ため、未着や膜厚不足が起きやすいです。
対策として
- 隙間を極端に狭くしない
- 必要に応じて逃げ穴・切り欠きを設ける
- シンプルな構造を心がける
4. 自重が大きく、吊り治具の影響を受けやすい
大型フレームは重量が大きく、メッキ時は吊り下げた状態で処理されます。
そのため、
- 吊り位置による歪み
- 吊り金具接触部のメッキ不良
- 吊り方向による亜鉛の溜まり(ダレ)
が発生することがあります。
対策として
- 吊り位置を想定した構造にする
- 使用上問題になる面を吊り位置にしない
- 外観重視部は事前に業者へ共有する
吊り位置は特に見落としがちと思いますので注意ですね。
5. 現地組立前提なら「分割メッキ」も選択肢
どうしてもサイズ・変形リスクが大きい場合は、
- フレームを分割してメッキ
- 現地でボルト接合
という設計も有効です。
特に、
- 運搬制限
- メッキ槽サイズ
- 精度要求のある構造
が絡む場合、最初から分割前提で設計するほうが結果的にトラブルが少なくなります。
大型H鋼フレーム × 亜鉛メッキの設計ポイントまとめ
- メッキ槽サイズは必ず事前確認
- 高温処理による変形リスクを考慮
- H鋼内部・重なり部はメッキ不良に注意
- 吊り位置・重量による影響を想定する
- 必要なら分割構造も検討する
設計者向け一言まとめ
「大きいものほど、メッキは設計で8割決まる」
H鋼フレームの亜鉛メッキは、後工程でどうにかなるものではなく、形状・構造・溶接計画が品質を左右するからです。
設計者が意識したいポイントまとめ
- 亜鉛メッキは「後工程」ではなく設計段階から考慮すべき処理
- 溶接、鋭角、密閉構造は特にトラブルが出やすい
- 寸法精度が必要な部位との相性は要注意
- メッキ業者との事前相談が品質を大きく左右する
まとめ
SS400などの鉄鋼に亜鉛メッキを施すことで、高い防錆性能を得ることができます。
一方で、形状・溶接・構造を考えずにメッキを指定すると、品質問題や再加工につながることも少なくありません。
「メッキは表面処理だから最後に考える」ではなく、
設計の一部として亜鉛メッキを理解することが、トラブルの少ない機械設計につながります。