この記事では、設計者なら押さえておきたい許容応力度と安全率の考え方をシンプルに整理します。
目次
許容応力度とは
許容応力度とは
「材料が降伏・破壊等、使用上支障のある変形などを生じず、安全に使用できるとみなされる設計上の基準応力度」です。
つまり、材料強度(降伏点・引張強さなど)に安全率を考慮した「設計に使うための目安の応力値」です。
許容応力度の値以内で設計すれば(ものすごい繰り返し荷重がかからない限り)壊れないという理解で良いでしょう。
具体例として
・SS400(板厚16~40mm)の降伏点: 235N/mm2
・安全率: 1.5
よって、許容応力度は 235÷1.5=156.6N/mm2となります。
156.6N/mm2という値はSS400の長期許容応力度です。
長期許容応力度、短期許容応力度についてはこちらの記事を参照ください。
ただし、「必ずしも安全率は1.5ではない」ということに注意してください。下記に説明します。
安全率とは
安全率とは
「材料に対して、生じる応力や荷重にどの程度の余裕を持たせるかを示す比率(係数)」です。
式で表すと、以下のようになります。

または逆に、

安全率を設ける理由
安全率は単に「余裕を持たせる」ものではなく、次の不確実性に備えるために設定されます。
万が一壊れた場合の影響度に応じて高めの安全率を設定します。
例として下記が挙げられます。
材料のばらつき
同じ材料でも製造ロットによって強度が異なる。
荷重の不確実性
実際の荷重が設計荷重より大きくなる可能性がある(衝撃、使用環境の変化)。
解析・計算の簡略化
理論上のモデルは理想化されており、実物との差異がある。
疲労や経年劣化
長期間の使用で強度が低下する場合がある。
人命・安全に関わるリスク
壊れると人命にかかわる場合がある。(設計の安全率もさることながら、日常点検が大事であると筆者は考える)
安全率の選定例
設計対象 | 安全率の目安 |
---|---|
一般的な静荷重部品 | 1.5~2.0 |
衝撃や振動を受ける部品 | 2.0~3.0 |
人命に関わる機械(クレーン、昇降機など) | ※4.0以上(※クレーン構造規格等を参照ください) |
安全率は「統一された万能の数値」ではなく、リスクと不確実性の大きさに応じて規格で定められているので、上記はご参考までに。
安全率JISや構造規格で定めていたり、社内で決まってたりすると思いますので最後は自分で確認してみてください。
まとめ
- 許容応力度 = 材料の強さ ÷ 安全率
- 安全率 = 設計の不確実性やリスクに応じて決める係数
- 設計では「実際にかかる応力 < 許容応力度」となるように設計する
各部品の許容応力度と安全率は「なんとなく」で決めるものではなく、
「どんなリスクに備えるか?」を考えたうえで設定するものです。
「なぜこの安全率にしたのか?」を自分の言葉で説明できると、信頼感がありますよね。
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