機械設計

機械材料の焼入れ・焼戻しとは 〜熱処理について覚えるポイント〜

実務でも良く目にする 熱処理の表記。

普段使っている人でない限り、なぜ強くなるか、なぜ焼入れするのか?よく分かっていない場合が良くあります。

特にエンジニアとして働くのであれば、理解していた方が仕事の幅もアイデアも広がります。

ここでは極めて簡単にポイントを絞って記述するので、もっと詳しく知りたいという方はページ最下部に参考にした本を載せておきますのでご参考に。

焼入れ・焼戻しとは

金属材料の組織を変化させて強く、硬くする目的で実施される

焼入れと焼戻しはほぼ100%セットで行います。

焼入れ・焼戻しを行うことで、”引張強さ”と”硬さ”が高まります。

ただし、どんな材料でも強くなるわけではありません。(下部のまとめに記載しています)

炭素を多く含むS45Cや焼入れ性を向上させた鋼材等、焼入れの効果が高い”焼入れ性が良い材料”が存在します

次に焼入れ、焼戻しについてそれぞれ何をしているか記述します。

焼入れとは

金属材料に対する焼き入れとは

金属がオーステナイト化する温度よりも少し高い温度で熱した後、油で急冷することでマルテンサイト組織に変態させること

一言で言うならば、焼入れは「炭素原子が金属の組織に入り込み、硬さを手に入れるために行う」

硬くなるのと同時に脆くもなります。

変態とは、結晶構造が変化することをいいます。

焼戻しとは

焼入れ後の硬く脆くなった金属に行う処理です。

組織が変化しない程度に再加熱することで靭性を付与する

つまり、硬くて脆い材料を使えるように整えているイメージです。

よって焼入れ焼戻しはセットで行うようになっているのです。

その他の熱処理

焼入れ・焼戻しは熱処理のうちの一つです。

代表的な熱処理を紹介しておきます。

焼なまし

金属材料を軟らかくし、ひずみ除去や加工性を向上させるために行う

炭素量の多い鋼材に行います。

金属が変態する程度の温度まで熱し、炉内でゆっくり冷却して粗いパーライト組織にします。

焼ならし

金属材料の組織を均一化して、性質のムラをならすために行う

鋼材の機械的性質を改善して、安定したものにします。

金属が変態するよりも高い温度で熱し、空冷で比較的急激に冷却して微細なパーライト組織にします。

焼なましと焼ならしはどちらもパーライト組織を作るために行いますが、得られる”粗さ”に違いがあります。

まとめ

熱処理について記述しました。

熱処理はS45Cなどの特殊鋼(普通鋼に比べて炭素量が多い金属)に行う処理です。

SS400(普通鋼)では炭素量が少ないため、熱処理は効果が期待できません。

SS400 では強度や硬さが不足する部品に、S45Cなどの焼入れ材を限定的に使用することが主な使われ方です。

なお、SS材の成分は不純物以外の上限値が規定されていません。特殊鋼には成分それぞれの規定値が決まっています。価格も考えながら設計していきたいですね。

SS400の応力度についてまとめた記事はこちら

もし少しでもお役に立てたならうれしいです!

今後ともよろしくお願いします。

参考文献

熱処理以外にも材料の基礎が学べる一冊です。

機械エンジニア必読です!!

  • この記事を書いた人

Lancer

機械設計のサラリーマン。 ロボット工学部→土木施工管理→機械設計。 家庭と仕事の両立のために働き方の改善をしようと日々奮闘中。 仕事と子育てに役立つ情報&趣味の英語を発信しています!!

-機械設計
-, , ,