ベルトコンベヤは、工場や鉱山、物流センターなどで幅広く利用されている搬送装置です。
その設計要素の一つに「トラフ角」があります。
この記事では、トラフ角を大きくすることで発生するメリット・デメリット、不具合、そして適正なトラフ角の選び方について解説します。
目次
1. トラフ角とは?
トラフ角とは、ベルトコンベヤの搬送面を支えるアイドラ(ローラー)が作る角度のことを指します。
ベルトをU字型にすることで、搬送物の保持力を高める役割を果たします。

一般的なトラフ角の目安は以下の通りです。
トラフ角(°) | 用途・特徴 |
---|---|
20° | 小型コンベヤ、一般搬送物(ダンボール、パレット) |
30° | 一般的な粉体・粒体搬送、標準ベルトコンベヤ |
35° | 大容量搬送向け(鉱石・石炭・砂利など) |
40°以上 | 長距離コンベヤ、超大容量搬送(特注設計が必要) |
2. トラフ角を大きくするメリット
✅ 搬送能力の向上
トラフ角を大きくすることで、ベルト上の搬送物を保持しやすくなり、搬送断面積が増加します。
その結果、一度に運べる量が増え、省スペースでの大容量搬送が可能になります。
✅ 粉体・粒体の飛散防止
ベルトの両端が上がることで、粉状・粒状の搬送物が飛び散るのを防ぎます。
特に屋外の環境では、飛散によるロスや周囲の汚染を抑えられるメリットがあります。
✅ 省エネルギーの可能性
搬送物がベルトの中央に集中するため、ベルトの摩擦抵抗が減少し、結果として駆動モーターの負荷が低減する場合があります。
3. トラフ角を大きくするデメリットと不具合
❌ ベルト端部に過大な張力が発生
トラフ角を大きくすると、ベルトの両端(エッジ部)に過剰な張力がかかり、摩耗や亀裂が発生しやすくなります。
これにより、ベルトの寿命が短くなる可能性があります。
❌ 搬送物の詰まりやこぼれ
急なカーブや急勾配では、搬送物がうまく流れず詰まりやすくなることがあります。
また、トラフ角が大きすぎると、投入時の角度によってはこぼれやすくなる場合もあります。
❌ ベルト蛇行のリスク増加
トラフ角が大きいと、ベルトの安定性が低下し、蛇行(ベルトの横ずれ)が発生しやすくなります。
そのため、蛇行防止装置やガイドローラーの設置が必要になります。
❌ アイドラ(ローラー)の負担増加
中央ローラーにかかる荷重が増大するため、ローラーの早期摩耗や破損のリスクが高くなります。
特に長距離コンベヤでは、メンテナンスコストが増加する可能性があります。
4. 適正なトラフ角の選び方
バランスの良い設計が重要
- 一般的には 30° が標準的で、多くの搬送物に適用できます。
- 35°以上 を採用する場合は、ベルトの耐久性や蛇行対策を検討する必要があります。
- 長距離や大容量搬送を考慮する際は、補助装置(センタリング装置、特殊ローラーなど)を導入するのが望ましいです。
5. まとめ
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
搬送能力 | 増加(大容量搬送が可能) | - |
粉体・粒体の飛散 | 防止できる | - |
省エネルギー | 摩擦低減で消費電力減少 | - |
ベルト寿命 | - | エッジ摩耗が増え寿命短縮 |
搬送の安定性 | - | 蛇行・詰まりが発生しやすい |
ローラー負荷 | - | 中央ローラーの摩耗が増加 |
トラフ角の設計は、搬送する物の特性や使用環境を考慮して決定する必要があります。
適切な角度を選び、メンテナンスしやすい設計をすることで、ベルトコンベヤの性能を最大限に活かすことができます。
他にも機械設計に役立つ情報をこちらでまとめていますので、よかったらご参照ください。
参考文献
- JIS B 8805: ベルトコンベヤの構造及び寸法
- 『最新ベルトコンベヤの設計とトラブル対策』 (日刊工業新聞社)
適正なトラフ角の選定でお困りの場合は、ぜひ専門メーカーやエンジニアにご相談することをお勧めいたします!