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正しい役割と間違った使用法、高力ボルトとの関係
機械設計でよく使われているワッシャー(別名:平座金)。
しかし設計時や現場では「とりあえず入れている」「穴が大きいから追加した」「向きは気にしていない」
という使われ方も非常に多い部品です。
この記事では、設計者視点でワッシャーの本来の役割と、やってはいけない使い方を整理します。
ワッシャーの本来の役割
ワッシャーの本質的な役割は次の3つです。
面圧の分散(座面保護)
ボルト・ナットの締結力は非常に大きく、そのまま締めると接触面に高い局部応力が発生します。
ワッシャーを入れることで次の効果が期待できます。
- 接触面積を増やす
- 面圧を下げる
- 母材の陥没・塑性変形を防ぐ
つまり、締結力を安定して伝えるための部品です。
摩擦条件の安定化
締結力(軸力)は、
トルク × 摩擦係数
で決まります。
座面が直接母材だと
「塗装」、「黒皮」、「バリ」、「表面粗さ」によって摩擦がバラつきます。
ワッシャーを介することで一定の摩擦条件を与え、軸力を安定させることができます。
座面の傷・焼付き防止
特に繰返し分解する箇所では
「ナット回転による摩耗」や「焼付き」を防ぐ役割もあります。
本来の役割から少し外れた「実務的な使い方」
現場では次の用途もよく行われます。
穴径が大きい場合の補助
例として
- 長穴
- ガス切断穴
- 現場合わせ穴
では、ボルト頭やナットが落ち込むのを防ぐためにワッシャーを使用します。
これは実務上OKだと思っています。よくやります。
ただし重要なのは締結面として成立しているかです。
ワッシャーが変形してそのまま抜けてしまわないようにしましょう。
NGなワッシャーの使い方
重ね使い(2枚以上)
よくある例として
「高さ調整」、「隙間調整」、「とりあえず追加しておけ!」
これは非常に危険です。
なぜNG?
下記のことが考えられます。
- ワッシャー同士が滑る
- 面圧が均一にならない
- 軸力が低下する
- 緩みやすくなる
ワッシャーがバネのように時間差で縮む動きをするため、せっかくボルトに軸力が作用しても、
ワッシャーが縮むことで軸力を確保できません。
よって、緩みやすくなるのです。
スキマ調整する場合はシムを入れるようにしましょう。
傾いた面への使用
斜面・歪んだ部材に平ワッシャーを入れると
「偏荷重が発生」、「ボルト曲げ応力増加」、「疲労破壊促進」の可能性があります。
この場合はテーパーワッシャーが必要です。
ちなみに、溝形鋼には5°のテーパーワッシャーを使用します。
バリ・塗装の上から締結
ワッシャーがあっても、
「ガス切断のバリ」や「厚膜塗装」、「スパッタ」の上では意味がありません。
理由は、ボルト締結後に潰れて軸力が低下するためです。
なぜNG使用が危険なのか
ボルト締結は
ボルトの伸び=バネ力
で成立しています。
ワッシャー使用を誤ると
接触面が沈み、摩擦が変化し、軸力が抜けることになります。
結果として、
・ 緩み
・疲労破壊
・ボルト折損
につながります。
高力ボルトにおけるワッシャーの役割
構造用の高力ボルト接合では、ワッシャーは必須部品です。
高力ボルトは
摩擦力で部材を固定する
そのため、軸力精度が重要です。
高力ボルトについてはこちらのサイトに詳しく載っています。
高力ボルトでワッシャーを入れる理由
軸力導入の安定化
均一な座面を作り、設計軸力を正確に導入するため。
座面陥没防止
数百kNの締付力でも母材が変形しない座金を使用。
ナット回転面の確保
本締め時の摩擦条件を一定化するため。
なぜ両側に入れるのか?
高力ボルトでは通常「ボルト頭側」「ナット側」両側にワッシャーを配置します。
理由は、どちら側も高面圧になるためであり、回転側だけでなく固定側も沈み込み防止が必要だからです。
つまり、
ワッシャーも締結性能の一部ですから、とても重要な部品です。
まとめ ワッシャーは「調整部品」ではない
ワッシャーは単なる付属品ではありません。
「面圧制御部品」であり、「摩擦制御部品」であり、「軸力安定部品」です。
設計者として重要なのは
- 「なぜ入れるのか」を説明できること
- 入れる理由が無いワッシャーは危険になり得ること
です。
ボルトより小さい部品ですが、締結の品質を大きく左右するのがワッシャーです。
機械設計に役立つ情報をこちらでまとめていますのでよかったらご参照ください!
