本当は危ない?のに使われ続ける理由を解説します。
設計するときや現場で、こんな疑問を持ったことはありませんか?
- この吊りピース、溶接だけど大丈夫?
- 疲労計算してないけど平気?
- 応力集中すごいかも?
それでも吊りピースは、
どの工場でも、どの設備でも当たり前のように使われています。
なぜでしょうか?

目次
吊りピースは「安全」だからではない
まず結論から記述します。
吊りピースが許されているのは、構造的に優れているからではなく、「使い方が限定されている」からです。
ここを誤解すると、事故につながりかねません。
吊りピースの前提条件
吊りピースは、設計上こんな前提で扱われています。
使用頻度が低い
吊りピースを使用するのは
- 据付時
- 撤去時
- 大きな改修時のみ
が主なため常時使わないのが通常です。
逆に言うと常時使う吊りピースは疲労強度も計算が必要です。
荷重はほぼ静的
吊りピースはつり荷を吊るときに使います。
ですから、
- ゆっくり吊る
- 短時間の保持
という使い方です。
つまり、疲労を生む繰り返し荷重を想定しなくてもよいのです。
使用時間が短い
さらに、吊っている時間も通常は限られます。
せいぜい数分〜数十分で、一つの設備で数回程度でしょう。
よって、疲労寿命に到達しない前提で良いと考えられるのです。
つまりは、疲労設計されていない!
多くの吊りピースは、
疲労計算をせず、応力集中を厳密に評価せず、残留応力も無視されがちです。
それでも成立するのは、
疲労破壊に至る前に、使い終わるからです。
それでも設計者がやっている“安全策”
吊りピースは雑に作られているわけではありません。
実は、こんな配慮をしたりしています
もちろん縁端部でのせん断は計算します。その際、短期許容応力をもとに安全率を大きく取るなどします。(3〜5以上)
また、溶接のビード幅からせん断の計算も行います。
吊りピースが「危険になる瞬間」
問題はここからです。
次の条件が一つでも当てはまると、話が変わります。
繰り返し使われ始めた
定期点検のたびに使ったり、常時吊りっぱなしにしたりする場合です。
この時点で疲労部材に格上げします。
動的荷重がかかる
クレーン操作が荒かったり、荷振れがひどかったり、急停止が頻発したりする場合は
衝撃荷重を考慮した板厚(板厚増の補強など)、溶接長を確保しなければなりません。
残留引張応力が強い
片側溶接や、非対称構造の場合はひずみが内部に残り、内部応力として作用してしまいます。
つまり、使い始めた瞬間から、平均応力が高いことになってしまいます。
「吊りピースだから大丈夫」は危険な思考
よくある誤解です。
吊りピース = 安全ではなく
使い方が限定されているから成立しているだけです。
もし使い方が据え付けや解体以外(特に常設)の場合は
- 疲労破壊
- 溶接割れ
- 突然破断
は十分起こり得ます。
設計者が最低限見るべきポイント
吊りピースを描くとき、これだけは確認しましょう。
- 本当に一時使用か?
- 繰り返し使われないか?
- 激しい荷振れは起きないか?
- 常に使われ続けないか?
まとめ
吊りピースは
「危ないけど、条件付きで許されている部品」です。
構造的に優秀だからではない。
材料が強いからでもない。
使われ方が限定されているから成立している。
この前提を忘れた瞬間、
吊りピースは普通に危険な溶接構造物になることを忘れないようにしたいですね。
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