機械設計

落下・衝突時の力の考え方と計算方法

結論

落下や衝突で発生する「力」は、質量や速度だけでは決まりません

つまるところ、

衝突時の力は「どれだけのエネルギーを、どれだけ短い距離(または時間)で止めるか」で決まる。

そのため、同じ質量で同じ速度でも、衝突相手の材質や構造が違えば

発生する力は何倍、何十倍にも変わります。

本記事では、

  1. 衝突速度の求め方
  2. 力を算出する基本式
  3. 停止距離・停止時間の考え方
  4. 材料ごとの停止距離の例
  5. 実際の計算例

を順に解説します。


1. 衝突速度の算出方法(落下の場合)

高さ h から物体を自由落下させた場合、落下直前の速度 v は次式で求められます。

g:重力加速度(約 9.81 m/s²)

h:落下高さ(m)

例:高さ 0.5 m から落下

※この式は質量に依存しません。重い物も軽い物も、同じ高さから落とせば同じ速度になります。


2. なぜ「質量 × 速度」では力が出ないのか

力は次の式で定義されます。

ここで重要なのは 加速度(どれだけ急に止まるか) です。

速度が 3 m/sで質量が 10 kgであっても、0.1 mm で止まるのか、10 mm で止まるのかによって、加速度も力も大きく変わります。


3. 衝突問題の基本的な解き方

衝突時の力は、次のどちらかの情報があれば算出できます。

  • 停止距離
  • 停止時間

実際には 停止距離から求める方法 がよく使われると思います。


4. 停止距離から力を求める方法

4.1 運動エネルギー

衝突直前の運動エネルギーは

です。

4.2 エネルギーと力の関係

衝突では

力 × 止まる距離 = 失われるエネルギーと考えることができます。

平均的な衝撃力は

x:停止距離

で求められます。


5. 停止時間との関係

停止距離が分かれば、停止時間は近似的に

で求められます。

停止距離が短いほど、停止時間は短くなり、力は大きくなります。


6. 材料ごとの代表的な停止距離の例

目安を以下に示しますが、経験的要素が大きいため、素材メーカーなどに確認が必要です。

衝突条件停止距離の目安
金属 × 金属0.05〜0.2 mm
樹脂 × 金属0.5〜1 mm
木材1〜3 mm
プラスチック系緩衝材3〜10 mm
ゴム・エラストマー5〜20 mm

7. 計算例

条件

  • 質量:10 kg
  • 衝突速度:3 m/s

運動エネルギー


例1:金属同士で衝突(停止距離 0.1 mm)

 約 45 tf


例2:樹脂部材で受けた場合(停止距離 1 mm)

 約 4.5 tf


例3:緩衝材を入れた場合(停止距離 10 mm)

 約 450 kgf

同じ条件でも、停止距離が10倍になると力は1/10になります。


8. 停止距離はどう決めるべきか

停止距離は理論で一意に決まるものではなく、次を基に決めます。

  1. 材料の変形量(厚みの30〜60%が目安)
  2. メーカーの圧縮特性データ
  3. 過去の実績・経験値
  4. 安全側の仮定

設計では 短め(厳しめ)に見積もる のが基本です。


9. まとめ

  • 衝突時の力は「質量×速度」では求まらない
  • 本質はエネルギーと停止距離
  • 停止距離が短いほど力は急増する
  • 材料・構造の選び方が衝撃力を支配する

落下・衝突設計で重要なのは、どれだけ強い材料を使うかではなく、どれだけうまく止めるかである。

この考え方を押さえておけば、落下・衝撃に関する設計判断ができるようになるでしょう。

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他にも機械設計に役立つ情報をこちらでまとめていますのでよかったらご参照ください!

  • この記事を書いた人

Lancer

機械設計のサラリーマン。 ロボット工学部→土木施工管理→機械設計。 家庭と仕事の両立のために働き方の改善をしようと日々奮闘中。 仕事と子育てに役立つ情報&趣味の英語を発信しています!!

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