「人間はミスをする」
これは精神論ではなく、人間の特性そのものです。
人の注意力には限界がある。
注意できるのは、本人が意識している対象だけであり、しかもその集中は長く続かない。
いわゆる“全集中”が保てる時間は、せいぜい20分程度とも言われています。
さらに、人は一つのことに注意を向けると、他の対象には注意が向かなくなる。
本人は一生懸命やっているつもりでも、意図とは無関係にミスをしてしまう。
ミスをすること自体が、人間の特徴です。
目次
ミスした人を責めても、事故はなくならない
この前提に立つと、
「ミスをした人の責任を追及すれば事故は防げる」という考え方が成り立たないことが分かります。
たとえば工場では、機械が止まったときに「できるだけ早く復旧させよう」として、
あわてて機械に近づき、被災してしまうケースが多い。
これを単純に
「作業者のミス」「自己責任」で片付けてしまうのは適切ではないのです。
たとえ「必ず機械を停止してから作業するように」と指示されていたとしても、
早く復旧させたいという心理が働き、つい手を出してしまう。
これは人間として十分に予見可能な行動です。
実際、このような行動は
JIS B 9700(ISO 12100)にも「予見可能なミス」として明記されており、
人ではなく、機械側で対策すべきものとされています。
注意喚起だけでは限界がある
表示や標識、警報は確かに有効です。
「指差し呼称」のように、人の行動によるミスを減らす工夫も長年実践されてきました。
しかし、どれだけ対策を重ねても、ミスそのものを完全になくすことはできません。
なぜなら、ミスは「気をつけ方」の問題ではなく、人間の認知特性に根ざしたものだからです。
大切なのは「ミスを前提にした設計」
だから必要なのは、「人はミスをする」という事実を受け入れたうえでの工夫です。
- ミスをしても事故につながらない
- ミスが致命的にならない
- 人がミスしても機械がカバーする
こうした設計思想が重要になります。
つまり、
「人の注意力に頼る安全」から「機械に頼る安全」「機械に任せる安全」へ
移行していくという考え方です。
これが「機械の安全」の基本思想
人に注意を促し続けるよりも、機械側で危険を防ぐ仕組みを作る方が、はるかに確実で信頼性が高い。
人は疲れる。
集中力も切れる。
感情にも左右される。
だからこそ、安全は人の努力に委ねるべきではないのです。
人がミスをする前提で設計する。
それが、機械安全の基本的な考え方であり、
事故を本当に減らすための現実的なアプローチなのだと考えています。
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